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小さな町だからこそできるきめ細やかな関わり ー鷹栖町が取り組むあたたかな食育活動

2018.09.16
高橋さやか WRITER

高橋さやか

北海道のほぼ中央、北海道第2の都市旭川市と隣接する自然豊かな町、鷹栖町。
トマトジュース「オオカミの桃」や肥沃な大地のもとで育つ良質なお米の産地として知られています。

食育フリーマガジンモグマグで、離乳食取り分けレシピの監修をおこなっている北海道文教大学の手嶋哲子先生が、鷹栖町の栄養士をされていたご縁から、今回、鷹栖町へと訪れました。
私にとっても幼い頃から馴染みのある土地で、約20年振り?! の鷹栖にドキドキしながら足を運んだのでした。


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町の福祉関係の事務室とお風呂、温水プールのある複合施設「サンホールはぴねす」の広い会議室で、鷹栖町 健康福祉課 保健推進係 栄養士の佐野綾香さんにお話をうかがいました。

■お話をうかがった人
佐野綾香さん

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鷹栖町 健康福祉課 保健推進係 栄養士

ーー今日はお時間をいただきありがとうございます。久しぶりの鷹栖で楽しみにきました。

佐野:こちらこそ、暑い中ありがとうございます。

ーー早速ですが、鷹栖町で行なっている取り組みについてお話を聞かせていただければと。

佐野:鷹栖町では、妊娠中、乳児期、幼児期など各ライフステージに合わせてさまざまな教室を行なっています。
妊娠中には、毎月、子育て支援センターでプレママ広場を。産後は、離乳食、幼児食、手作りおやつの教室などを年に4回実施しています。年度末にはお楽しみ会もあります。

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ーープレママ広場では、具体的にどのような内容を?

佐野:栄養士、保健師、保育士がそれぞれの分野で、妊娠中の体重コントロール、鉄分、母乳育児での食事のポイントなどをお話ししています。

ーー1回にどのくらいの人数が受講されるんでしょう?

佐野:多ければ5〜6名、少ない時だと2名くらいですね。
教室というよりは、アットホームな感じで、和室の小さな部屋で気軽にお話しするような感じです。

takasu_19子育て支援センターでの教室風景

ーー少ない人数だと、質問なども気兼ねなくできそうですね。

佐野:そうですね、気軽にお話できるような雰囲気を心がけています。
プレママ広場だけでなく、その後の乳幼児健診などでも関わっていくので、そこからの顔つなぎという意味もあります。
子育て支援センターを会場にしているので、産後にこういった施設を利用できますよ、という紹介の役割も担っています。

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ーー産後に子育て支援センターを利用できるというお話ですが、食に関してはどのような取り組みをされているのでしょう?

佐野:子育て支援センターにいらしているお子さんの月齢に合わせ、今どんなものを食べているかなどをうかがって、離乳食のお話をしています。
その場で実際に、にんじんをすりつぶしたり、大きさを変えて見てもらうことで、成長に合わせて展開していけるような内容をお伝えしています。

ーーそれは、すごくわかりやすいですね。

佐野:幼児食に関しても、支援センターの保育士さんからお母さんたちが悩んでいることやつまずいていることなどを聞いて、それに答えるような対応をしています。
例えば、「品数をあまり作れないんです」という場合には、一品でタンパク質も野菜も取れるようなメニューをご紹介したり・・ということをしていますね。

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ーーひとりひとりにきめ細やかな対応で、お母さんたちの悩みにすぐ答えられる環境ですね。

佐野:小さい町ならでは、といったところでしょうか。
支援センターの保育士さんも協力して関わってくださってるので、10分程度のミニ講和などをさせてもらったり。

子育て世代のお母さんたちは、食への興味関心が高く一生懸命なので、少しでも手助けできればと思っています。
個人差がすごく大きくて、「全然食べない」「緑の野菜を食べない」という場合に何か提案をして、お母さんが試してみても、「食べてくれない」ということもありますし。
「こないだまで食べていたのに、急に食べない」という声に「今は月齢的にこうですよ。」とお伝えしたり・・私自身もお母さんたちと一緒に悩みながら、反応を見ながら、少しでも良くなればと試行錯誤しながらやっている感じですね。
なるべく、小まめに相談してもらえる関係を目指しています。


ーー食の悩みってその都度変わっていくので、小まめに相談できる環境があるのはお母さんたちにとってもありがたいですね。
さまざまな教室をされる中で皆さんの反応はいかがですか?

佐野:「参加してよかった。家でも作ってみました」という声をいただくと嬉しいですね。
今、6年目ですが、顔見知りになった方や支援センターで関わったお母さんから「やって見たら食べてくれた」という声を聞けるとやりがいを感じます。

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ーー身近なところで反応がえられるのは、うれしいですよね。
取り組みをされていく中で感じている課題などはありますか?

佐野:そうですね・・教室だと参加される方が決まってきてしまうんですよね。
参加されていない方でも悩みを抱えている人はいらっしゃるので、健診の時に、食生活や生活リズムが気になる方がいた時は、保健師さんと訪問したりしています。
訪問すると、家庭の様子が見えるので、より日常生活にあったお話はできているのかな、と思います。

 

農産物が豊かな鷹栖町では、お母さん向けの教室はもちろん、子どもたちに向けた食育の取り組みもさかんです。
保育園や小学生向けの取り組みについてさらにお話をうかがいました。

ーーこれまでは、どちらかというとお母さん向けの取り組みについてお話をうかがいましたが、子どもたちに向けた取り組みは何かありますか?

佐野:保育園の先生と相談しながら進めているのですが、クッキングの会や、園の畑で収穫した野菜を使った立食パーティーを実施しています。

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ーー立食パーティー!楽しそうですね。

佐野:1つ食べたらシールを貼れる、というカードを園児に渡して実施しています。
とうきびのように子どもたちの好きな野菜もあれば、ピーマンなどの苦手なものもあるんですが、シールのおかげか苦手なものでも頑張って食べてくれますね。

調理師さんには、ごく薄く塩コショウをしてもらって素材の味を感じてもらうようにしています。
年長さんになると、カレー作りがあったり・・お米が収穫できる秋以降は、みんなでお米を研いで、炊いて、おにぎりにして食べる日もあります。

takasu_17保育園での食育活動(野菜バリバリパーティー)

takasu_18保育園での食育活動(おやつ作り)

ーー特産品のお米、しかも新米をおにぎりにして食べるなんて最高ですね。

佐野:そうですね。特産品ということでいくと、トマトジュースを使ったミートソースや煮込みハンバーグも保育園の給食で提供しています。あと、おやつの時もいつもは牛乳なんですけど、トマトジュースの日もありますね。

ーーそれは、贅沢な・・!

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佐野:それ以外にも、「まるごとあったかす給食」という地産地消給食の日を年に2回、実施しています。
ちょうど野菜がたくさんできる8月、10月頃に特産品のトマトジュースをはじめとして、お米、鷹栖牛、お豆腐や町内の野菜を使った給食を提供しています。

ーー子どもたちの反応はどうですか?

佐野:それが、最近はトマトジュースが苦手という子も多くて。「また、トマトジュース?」なんて声もあったりするんですけれど。

ーー近くにあると意外と良さがわからなかったりしますよね。
私は、大学時代に北海道を離れて初めて「なんておいしいものに囲まれていたんだ!」と思いました。

佐野:確かに、身近にあるとそんなに感じないけれど、どこかのタイミングで気づいてくれると良いですね。
自分のお家や、おじいちゃんが農家というお子さんもいるので、あったかす給食の日は「うちの野菜かな、お米かな」という反応があったり、苦手なものが出ても「いつもよりおいしい」と食べてくれたりしますね。
子ども達が大きくなった時に「あんなことやったな、鷹栖でよかったな」と少しでも思ってもらえるといいなと思いながら取り組んでいます。

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ーー地域の子どもたちに向けて、さまざまな取り組みをされていますが、今後やっていきたいことは何かありますか?

佐野:保育園や幼稚園での食育からうまく家庭につなげていけるようになると良いですね。
幼児期だと、まだ自分で食のことってできないので。その一環として、年齢に合わせて箸の練習の時期を分け、4~5歳児は夏ごろ、3歳児は秋以降に、食育で箸の持ち方を指導した後にお箸の持ち方のカードをお渡ししています。
持ち帰れるものがあると、お子さんも「こんなのもらったよー」とお母さんに届けてくれるので。

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小学生向けに「ビストロキッズ」という料理教室を行なっているのんですが、保育園の時に指導したお子さんが「30回噛んで食べるんだよね」と言ってるのを聞いて。そんな風に、伝えたことが少しずつ繋がっていくといいなと思っています。
料理の体験が子供の成長や自己肯定感の形成にも良いといわれているので、「できた」「楽しかった」というのを積み重ていってほしいです。
お家だとなかなかできないことも、こういった場で体験してもらえると良いなと。

takasu_15夏野菜を使った料理に挑戦!今年度は、小さい子のクラスが夏野菜カレー、3年生以上がフライパンで焼けるピザを作るそう。「子ども同士で、順番を決めたり時には注意しあったり・・自主性があって大人が口を出さなくてもちゃんとできるんだなと思いました」と佐野さん。


ーー園での食育活動やビストロキッズなど、ポイントポイントで子どもたちの成長を見られるのは嬉しいですね。

佐野:プレママ広場の時から関わっているお子さんが、幼稚園・保育園から小学校に・・と関わっていけるのは小さい町ならではの良いところだな、と思いますね。
こないだまで「いやだ」と言ってた子や、なかなか早く食べられなかった子が成長していく様子を見られるのが嬉しいなって。
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地域の人たちと関わり合いながら、食育だけでなくさまざまな面で町民の栄養を支える佐野さんに、栄養士になったきっかけをうかがいました。

ーーお話を聞いていると、すごく生き生きとお仕事をされている印象を受けたのですが、栄養士を目指したのには何かきっかけがあったのでしょうか?

佐野:母が入院して食事をあまり食べられなかった時に、「病院の栄養士さんが体調に合わせた食事を考えたくれた」というのを聞いて、素敵なお仕事だなと。
大学で学んでいくうちに、小さな町で密に関われて、反応が間近に見られる行政での栄養士という仕事に魅力的を感じました。
今は憧れていた方向にありがたくつかせてもらってますね。

ーーわぁ〜素敵なお話ですね。

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佐野:出生率もそれほど高くないので、顔が見える関わりができているのはすごくいいな、と感じています。
人と関わるからこそ、色々な方がいて難しさも感じる反面、幅広い世代に関われるのは他の仕事にはない良さかな、と思いますしやりがいはありますね。
自分一人では、できることが限られているので、他の部署と連携しながら、色々なことができて・・関係する方の協力も大きいです。

食べることって、適当にしていても生きて行けますけど、生きていくこと、生活することと直結しているので、それを楽しんでもらえるといいなと思いますね。楽しく食べるってことは、すごく大切だなと。
小さいお子さんに関しては少しでも食べることに興味を持ってもらえたらうれしいです。

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かわいらしく柔らかな雰囲気の佐野さん。実は、わたしと同じ中学校出身だったという、うれしい偶然も。言葉の端々から仕事への強い思いが伝わってきました。
小さな町だからこそ、顔が見えて気軽に相談できる。関わった子ども達の成長を近くで感じられる。地域の人たちとのきめ細やかな関わりに魅力を感じた今回のインタビューでした。

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食育フリーマガジン『mogmag(モグマグ)』代表取締役 編集長。
食育アドバイザー/幼児食インストラクター。

寒くて暑い旭川市出身。幼少期はおもに、自然豊かな「お米とでんすけすいかの街」当麻町にある祖母の家で、田んぼと畑を走り回って過ごしました。「思い出にはいつも食べものがある」食いしん坊の料理好きです。
大学進学を期に北海道をはなれ、都会の荒波にもまれる。卒業後、札幌にうつり印刷会社、広告代理店などをへて、2010年実父とお酒と音楽のお店 oyacoをオープン。
デザイン、イベントの企画運営、店舗運営に携わり、「占ナイト」「モテナイト」などユニークなイベントを展開。2012年惜しまれつつ閉店しました。
2012年よりフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動し、2013年に長女を出産。
子育てをきっかけに「子どもと食」の大切さを見直し、2015年食育フリーマガジンmogmag(モグマグ)を創刊しました。
「ママも子どもも笑顔の食卓」をテーマに情報を発信し、おいしい笑顔をはぐくんでいます。
北海道新聞『朝の食卓』にて、コラム執筆中です。

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http://www.sayakat.com

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