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子どもの食育暮らしと食

佐藤麻美さんインタビュー〜一緒に作り、伝える。小さな積み重ねで育む「食」への興味

2018.06.24
高橋さやか WRITER

高橋さやか

子育ては、十人十色。
--頭ではわかっていても、ままならない毎日の中で、キラキラしたママが眩しかったり、私以外のママが完璧に見えてしまう。そんな時ってありませんか。
けれど、実際に話してみると同じ悩みを抱えていたり、それぞれに奮闘している姿をみて「私だけじゃなかった」とホッとして、「明日からまたがんばろう」という活力になる。

モグマグでは、そんな「ホッとする」ひと時を提供し、ママならではの「子どもとの食を楽しむヒント」を届けたいとの思いから、現役の子育てママへのインタビューをスタートしました。
第一回に登場するのは、HTBの深夜番組「おにぎりあたためますか」に出演中の佐藤麻美さんです。食べること、作ることが大好きで野菜ソムリエの資格も持つ麻美さん。プライベートでは、5歳と2歳の2人の男の子のママです。試行錯誤しながら見つけた麻美さん流「子どもとの食を楽しむヒント」とは?

■お話をうかがった人
佐藤麻美さん

mama1-11HTB編成部所属。全国を食べ歩くバラエティ番組「おにぎりあたためますか」(HTBで毎週火曜深夜0時15分放送)に大泉洋、戸次重幸と共に出演。
野菜ソムリエプロなどの資格取得。子育て奮闘中のワーキングママ。

 

「お待たせしました!」
久しぶりにグッと気温が上がった5月の終わり。
この日の陽射しのように鮮やかなオレンジのトップスを身にまとった麻美さんは、息を切らせながら待ち合わせのお店へとやって来てくれました。
夕暮れの陽が射し込む窓辺で、子育てのこと、お仕事のことについてお話を伺いました。

mama1-2今日はお時間をいただきありがとうございます。お仕事は、15時まででしたっけ?

麻美:今は、時短勤務なので15時までですね。



毎日あっという間に過ぎていくんじゃないですか?

麻美:なんていうか、いっぱいいっぱい。トイレに行く時間も惜しいほど。笑
一人目の時はあんまり詰め込みすぎてしまったので、今はお昼の時はちゃんと休むと決めて、午前と午後でメリハリをつけるようにしています。

 

メリハリ大事ですよね。時短とはいえ、お仕事が終わってから、お迎えに行って夕飯の準備して・・夕方はかなり慌ただしいんじゃないですか?

麻美:時間のある時に、ある程度夕飯の下準備をしておくようにしています。
お腹を空かせて帰ってくる息子たちがすぐに食べられるように、フルーツを用意しておいて、食べている間に料理を仕上げます。

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フルーツですか!それいいですね。
私はいつもチーズとか・・あと少し残ってるパンをあげちゃったり。

麻美:それはわが家もあって、朝残したパンを息子が見つけて食べちゃったり・・「しまった!」という時はありますよね。
最近は、下の子が冷凍庫を開けるようになったので、冷凍庫のアイスを見つけないようにいかに隠すか。
隠してあっても、上の子が「アイス」というキーワードを出してしまって・・

 

その攻防戦は、ありますよね。笑

麻美:そうは言っても、あんまり戦ってると自分が辛くなるので、根負けするまではやらない。と決めて、メリハリをつけて接しています。

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2人育てて実感した「子どもの好み、食べ方はそれぞれ」

麻美さんとはじめてお会いしたのが、2015年に札幌市主催で行われたイベント「子育て未来フェスタ」でした。
トークセッションの中で、お子さんのやりたいことを可能な限り叶えてあげてるというお話を聞いて、すごいな! と思ったんです。
私にはできないな・・と。出勤前にお味噌汁を一緒に作ったり。

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麻美:ちょうど、上の子が2歳くらいの頃ですね。
3歳までって自分の「やりたい」の主張が激しい時期じゃないですか。
今思うと自分でもよくやってたなと思います。
やりすぎだったんじゃないかと。

 

私とは人間のレベルが違う!なんて思っていたんですが・・その後、下のお子さんが生まれてからお会いした時に「離乳食とかすごい大変でしたよね」というお話をされていて「あ、マミさんでもそうなんだ」とすごく安心したんです。
下のお子さんも成長されて・・男の子が2人いると、どんな感じでしょう?

麻美:2人いると、食に対する好みと行動が違うところが面白いですね。

上の子はのんびりタイプで、朝起きてからなかなか行動できない。
「ご飯だから座って」と声かけしてもなかなか動けなくて、5回くらい言ってやっと動いてくれるんですよね。
本を読んだり、自分の世界感を大事にしていて、自分のタイミングで食卓につきます。

一方で、下の子は、起きたらすぐ食べたいタイプ。
自分の好きなものが食卓にある時だと、起きたら1分で食卓に! 全然タイプが違いますよね。

食べものの好みや食べ方も違って、上の子は、好きなものをまず先に、食べ終わったら次のものに・・という「ばっかり食べ」がいまは悩みかな。
下の子は、満遍なく食べて自分のタイミングで切り上げて終わるので、こちらが驚くほど。

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兄弟でそんなに違うものなんですね!
上のお子さんの行動は、うちの娘も同じです。
自分の世界やペースがあるのは、第一子の特徴なのでしょうか。

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「野菜を食べること、北海道のものを食べること」を大切に

お子さん2人の好みや食べ方が違う中で、「これはよく作る!子どもたちも好き」というメニューはありますか?

麻美:よく作るのはドライカレーですね。
具材の野菜を季節ごとに変えていて、夏ならパプリカなど抗酸化作用の高いカラフルなものを。
冬はユリ根を入れたり、せっかく北海道に住んでいるので、この土地ならではの食材を取り入れるようにしています。

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私もカレーはよく作りますが、ユリ根の発想はなかったです。

麻美:ホクホクしておいしいですよ。
同じ料理でも季節によって味も食感も見た目も変えることができるので、子ども達にもそれを楽しんでほしくて。

一番大事にしているのが「野菜をしっかり食べること」なので、一食の中に必ず野菜のおかずを何品か取り入れたり、一品の中に何種類か加えるといった工夫をしています。

あとは、常備菜というほどじゃないですけど、2人とも青菜が好きなので、時間があったら茹でて冷蔵庫に置いてあるのと、上の子が作ってくれるきゅうりの漬物。
青菜はツナや納豆とあえたり、お味噌汁に入れたりと活用してますね。

 

青菜嫌いな娘を持つ身としては、青菜が好きなことも驚きですが、きゅうりの漬物をお子さんが作るとは、びっくりです。

麻美:塩もみのお漬物なので、子どもでも簡単に作れるんですよ。
2人ともとにかくキッチンに立ちたがり。
私自身も子どもにちゃんと食に興味を持てる人になってほしいという気持ちがあって、上の子の時は、3歳前から包丁を持たせて、炒めたり、揚げものなんかも少量の油でポテトフライを作ったり・・と色々やらせていましたね。
私が野菜ソムリエなのを知っているので、最近は、買いものに行くと野菜の選び方を聞いてくるようになりました。

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小さい頃からの積み重ねで、野菜への興味関心が育っているんですね。下のお子さんはどんなことを?

麻美:下の子は、2歳になって最近はじめて卵を割るのにチャレンジしました。
ポテトサラダを作る時にも、おいもを茹でて、マッシャーで潰すのを一生懸命やってくれます。

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2歳って発する言葉はままならないけど、ちゃんと大人の言葉は聞ける。
作る時に、「根菜は水から茹でるんだよ」「葉物は沸騰してから塩を入れて茹でると色が鮮やかになるでしょ」と言葉で伝えながらやっていますね。
リアクションはそれほどなくても、何か吸収しているなと感じるんです。

--どうしても、一緒に料理をすると「気をつけて」が多くなってしまいますけど、調理の過程を言葉がけで伝えるって、すごく大事なことですね。

 

お父さんになった時に、ご飯を作れるように

麻美:巣立っていった時に、ちゃんと自分でご飯を作れる人になってほしいんです。
もっと言うと、結婚して子どもが生まれた時、一日三食って、お母さんも体調の良い時ばかりじゃないから、大変じゃないですか。
だから、料理も含めて夫婦で分担できる人であって欲しいなと思っています。どうなるかわからないですけど。

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忙しい日々を送りながらも、お子さんとのお料理や食卓を囲む時間を楽しんでいる麻美さんですが、第一子を抱えての仕事復帰は大変だったそう。
試行錯誤しながら見つけた日々を乗り切る工夫について伺いました。


無我夢中だった仕事復帰の頃

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先ほど、1人目のお子さんを抱えての職場復帰の時に「詰め込みすぎてしまった」とおっしゃっていましたが。

麻美:上の子の時は仕事を始めたのが生後7ヶ月の時で、自分自身がこだわりすぎて辛くなった時期はありました。

 

7ヶ月というと、離乳食の中期で2回食になって、みじん切りで・・とかなり大変な時期ですよね。

麻美:そう。一番復帰しちゃいけない大変な時期だったんですけど・・初めてのことで、感覚としてわからなかったから、「この頃には少し楽になっているんじゃないか」と思っていたんです。
あと数ヶ月、1歳頃だったら離乳食もずいぶん楽になるのにって今ならわかるんですけどね。

授乳して離乳食もあげて、という時期。
授乳が3時間おきだったので、夜は一緒に寝て、次の授乳で起きた夜中のタイミングで、家事をして朝食用の離乳食を作って・・おかゆ、タンパク質のもの、野菜、と小鍋を3つ用意してやっていました。

 

聞いただけで、クラクラしてきます。

麻美:自分でもよくやってたなと思います。
復帰したてで、家事と仕事のバランスもわからない。
仕事もしっかりやるためには、自分も食べないとダメだし、搾乳しながらお昼ご飯を食べて、ロケの台本を読んで・・ということを会社の個室でやっていましたね。
1人何役?状態。無我夢中で、一日日が戦いでしたね。

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1人目の子育てって、どこで手を抜いたら良いかわからなくて「手を抜いたらダメなお母さん?」と思ってしまったり、バランスが難しいですよね。
私なんて「1人でも大変!」と思ってしまうのですが、お子さんが2人になってお仕事に復帰されてからはどうですか?

麻美:1人目の時は「ダメなことはダメ」とストレートに向き合うだけでしたが、2人目になってからは「視点を変える」ということができるようになりました。

例えば、したいことができなくて泣いている時は、「別の部屋に行って気分を変えて遊ぶ」とか、「お外の神様に聞いてみよう」とベランダに出て、1人2役で演じるとか(笑)

特にイヤイヤ期は気持ちをどうそらすかがポイントなんだとわかるようになりました。
子育てって経験だなと。

食事や買い物も自分にフィットした方法がわかってきました。
週に一度大きく買い物をしに行って、その中から献立を考えると効率が良くて、乾物などの保存食も使いながらアレンジを加えたりしています。
でも、週の半ばくらいで食材が足りなくなって「あれ? 毎日買い物してる?」なんてこともありますが。笑

 

それは、私もあります。笑
頭の中でイメージしてこれで完璧! と思うんですけど、なぜか足りなくなるんですよね。

麻美:ご飯を食べてお酒を飲みながら、会話をするのが夫婦円満の秘訣だと思っていて。
そうなると、お酒がはかどるとともにあれこれ作って「あれ? もう食材が?」みたいなことがありますね。笑
週末の朝とか品数が少ないんですけど「これはこれでいっか」と割り切っています。

子どもが生まれたからこそ、ちゃんと話すことって大事で、その時間が少なかった頃はちょっとギスギスしていた時期もありました。
楽しい食事と会話の時間が増えてから、また関係が良好になりましたね。

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子どもとご飯の時間を楽しむコツ

子どもの好き嫌いや、食事の時間への悩みを抱えるママに向けて、最後に、子どもとご飯の時間を楽しむコツをうかがいました。

麻美:一緒にやってみるということにつきますね。
"一緒に何かをする"という経験から、子どもは派生して色々なことに興味を持ってやるようになるんだ、と感じています。

自分から「ポテトサラダを作りたい」とか、塩や醤油、ソースなど色々な調味料を試してみたいとか、「自分から何かをやりたい」という意欲が2人ともあるのが嬉しいです。

最近驚いたのが、盛り付けをお願いした時に、下の子がワンプレートで盛り付けていたんです。
教えたわけじゃないのに、自分の発想で「自分だけのお皿を作りたい」と思ったんでしょうね。
子どもって十人十色でそれぞれの個性があるから、子育てって面白いですよね。

 

素敵な発想ですね。

麻美:一緒に作ることのハードルが高ければ、まずは、食べものの絵本を読み聞かせしてみるとか。
長男には2ヶ月の頃から、野菜の本を読み聞かせしていました。
私は野菜ソムリエの勉強に使った野菜辞典なんかも。笑

もう少し大きくなったら、一緒に買い物に行って、食材を選ばせてみると、少しずつ食に興味を持ってくれる。
意外なものを選んだりするので、こちら側にも発見や刺激があります。

ステップを踏んでいくと、ちょっとずつ食のいやいやは解消されるんじゃないかな。

一緒に作るのは、時間もかかるし、洗い物も多いし、床もベタベタになるけど、そこを乗り越えると興味を持って自分から何かをするようになっていくから、わが家は、キッチン立ち入り禁止にはしたくない、と思っています。

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仕事に、子育てにと奔走する毎日の中で、時には「あれ? こんなはずじゃ・・」という瞬間ってありますよね。
麻美さんのエピソードに、同じママとしてともに笑い、共感しあった楽しいひとときは、明日へのヒントにもなりました。

一緒に作ること 言葉はままならない小さい頃からでも伝え続けること
慌ただしい子育ての日々の中で、ともすれば、後回しになりがちなことですが、丁寧に向き合うことが大切。
「ステップを踏んでいけば、ちょっとずつ食のイヤイヤは解消されるんじゃないかな」という言葉に、まずは、小さな積み重ねからスタートしていこうと思ったのでした。

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【取材協力】
focacceria hako(フォカッチェリア ハコ)

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白とブルーの壁が印象的なかわいらしい店内で、お野菜たっぷりの独創的なフォカッチャがいただけるお店。
パスタや肉・魚などの本格イタリアンも気兼ねなく楽しめるカジュアルな雰囲気で、ランチ、ディナーともに子ども連れのファミリーも暖かく迎えてくれます。
フォカッチャやオードブルのテイクアウトもあり、本格的な味を自宅でも楽しめるのは子育て中のママにとっても嬉しいポイントです。

Tel:011-211-1642
住所:〒064-0805 北海道札幌市中央区南5条西23丁目2-22

営業時間: 
[火〜日] 11:00〜16:00(L.O15:00)/18:00〜22:00(L.O21:00)
定休日:月曜

 

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WRITER

食育フリーマガジン『mogmag(モグマグ)』代表取締役 編集長。
食育アドバイザー/幼児食インストラクター。

寒くて暑い旭川市出身。幼少期はおもに、自然豊かな「お米とでんすけすいかの街」当麻町にある祖母の家で、田んぼと畑を走り回って過ごしました。「思い出にはいつも食べものがある」食いしん坊の料理好きです。
大学進学を期に北海道をはなれ、都会の荒波にもまれる。卒業後、札幌にうつり印刷会社、広告代理店などをへて、2010年実父とお酒と音楽のお店 oyacoをオープン。
デザイン、イベントの企画運営、店舗運営に携わり、「占ナイト」「モテナイト」などユニークなイベントを展開。2012年惜しまれつつ閉店しました。
2012年よりフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動し、2013年に長女を出産。
子育てをきっかけに「子どもと食」の大切さを見直し、2015年食育フリーマガジンmogmag(モグマグ)を創刊しました。
「ママも子どもも笑顔の食卓」をテーマに情報を発信し、おいしい笑顔をはぐくんでいます。
北海道新聞『朝の食卓』にて、コラム執筆中です。

ブログもご覧ください。
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http://www.sayakat.com

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